基本データ
著:樋口泰行
出版:日本経済新聞社
まえがき
樋口泰行さんはビジネスマンなら誰でも知っているでしょう。新人の頃松下電器産業(現パナソニック)に入社した後、留学してMBAを取得、コンサル会社、Apple、コンパック、日本HP社長、ダイエー社長、日本マイクロソフト社長を経験し、2017年から現在はパナソニックの代表取締役として働いてるとても多くの会社を渡り歩いてきた経営者です。(週刊東洋経済 17/12/16発行参照)
グローバル企業で働く人へのマインドセット
本書の第1章“どうすれば「自分の価値」を高められるか?”は20-30代のこれから働く世代にとって参考になると思います。著者はもともと理系のエンジニアとして勤め始めて、数々の外資に転職して今にいたるまでの過程が述べられています。
特に胃の中に「ストン」と落ちたのが本書26ページの部分です。
外資系企業の日本法人では、まったく異なる2つの側面、能力が経営リーダーには求められるからである。
まず日本のお客さまにものを売るには、ものすごい日本的な営業力、つまり人間同士としての親密さや信頼を醸成した上でのウエットな関係やそこに至るまでの情熱に基づく営業力が求められる。一方で、本社とのやりとりや連携はきっちりとやっていかなければならず、そこは非常にアメリカナイズされたロジカルでタフネゴシエイトな世界だ。
〜中略〜
この日本人に受け入れられるキャラクターや営業力と、真逆のアメリカ人に受け入れられるキャラクターやアグレッシブさの両方を持ち合わせてなければ、日本法人の成績は上げられないのである。
※本書P26より引用
私もグローバルの視点で仕事をしなければいけない立場であり、国内市場より海外の市場をに常に目を向けなければならず、このような「デュアルな能力」がなければこれから戦えないというメッセージを読んで、できれば今の会社に転職する前に読んでおきたかったマインドセットでした。
こういった理系卒で多くの業界を渡り歩いてきたことは、理系卒の我々ととても近い目線でかつグローバルな視点で語られている点が非常に面白かったです。
第1章では今後どのような人物が求められ、組織に対しても何がRequirementとしてあるかが理路整然と経験を以って説明してありとても読みごたえがあります。20-30代で海外と仕事をしている層にはとても刺激になるでしょう。
会社はなんのためにあるか?を考える
「大局観(英語ではBig picture)」を持つことが大切であると4章からありますが、仕事をしていて“自分の業務が何のために存在し、事業や会社も含めて何のためにあるのか?”それを常に考え続けることが訓練のひとつとあります。
この4章ではこれからビジネスマンとして仕事をする上でとても大切なマインドセットが描いてあり、とても読み応えがあります。
大局観は私の意見では、社会情勢や技術的な面のトレンドやヒストリーを踏まえて、総合的に評価することだと思っています。また、私の会社の存在意義では「グローバルにお客様に高品質の商品を提供し、感動を与える」ことをモットーとしています。
様々な企業のケーススタディー
樋口さんは5社もの企業を転職してきただけあってとても経験値が高く、特にIT関係の知識ついては販売戦略を含め、クラウドなどの技術的なことにも触れています。
リーダーたるもの、自分の仕事に関しては技術的なところも理解しなければならないという姿勢はとても参考になったし、私も技術的に何がどうなっているかは常に納得したいタイプなので理系の読み物としても面白いです。
あとがき
電車の中で読んでいた本で、グローバルにこれからの激動の時代を戦うマインドセットとしてとても参考になるビジネス書でした。とても理路整然と説明されているので読みやすいのも良いところですね。