電波の定義
はやりの言葉にもなっているIoT (Internet of Things)やLTE、Wi-Fi、WiMAX、GPS、昔からあるラジオなどはすべて電波です。
スマートフォンでなんとなく電波を受信してデータをやり取りしていることはイメージできると思いますが、そもそも電波とはなにか考えてみます。
大辞林で検索すると下記のように定義されています。
電磁波のうち、周波数3000ギガヘルツ 以下、すなわち波長0.1ミリメートル 以上のもの。
出典: https://kotobank.jp/word/電波-6554
また世界大百科辞典だと下記のように定義されます。
電磁波を応用分野では主として電波と呼ぶ。電磁波は物理学の対象としての電波の呼称である。一般に物理学上では,いわゆる電波だけでなく,光やX線,γ線も電磁波に含まれる。これに対して電波といったときは,周波数300万MHz程度のものまでをいう。 電波の利用に関して,電波の公平かつ能率的な利用を確保するために電波法が制定されているが,電波法では,第2条において〈電波とは300万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう〉と電波を定義している。
出典:https://kotobank.jp/word/電波-6554
以前当ブログではWi-Fiについて概略を説明しましたたが、電波は目に見えない波でありかつ光のような性質ももっています。これらの性質を理解するには、基礎的な部分から理解しなくてはなりません。
参考リンク: 【初心者向け】Wi-Fi(ワイファイ)って何?: 仕組み・原理・端末の選び方・設定・セキュリティについて
本エントリーのScope (範囲)
●日本の電波利用状況
●電波のパラメーター
●スペクトラムアナライザによる電波の測定
日本の電波の利用状況
下記画像は総務省の画像を引用したものです。電波は我々の暮らしの中で様々な用途に使われ、用途ごとに法律で割り当てる周波数が厳しく定められています。
引用:http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/index.htm
電波は資源と同じ扱いなので、法律によって周波数ごとに用途を明確としまた測定機器や免許についても指定されています。違法な出力や周波数の電波を許可なく利用した場合、法律によって罰せられることもあります。
電波のパラメーター
具体的に電波のパラメーターについて説明していきます。まずはじめに電波には振幅と周波数があります。オシロスコープで波形を確認すると周波数と振幅、など様々なパラメーターを調べることができます。
画像引用:https://www.keysight.com/ja/pcx-2759552/infiniivision-1000-x-series-oscilloscopes?nid=-32110.0&cc=JP&lc=jpn
※オシロスコープは主に回路に流れる電流の評価を行うなどの用途で利用されています。
振幅とは、波の高さを意味し、波が高いほど振幅が大きくなり、出力も大きくなります。ざっくりいうと振幅の大きさ=エネルギーの大きさです。
周波数とは1秒ごとの波の数です。1秒間に動作する回数を意味し、SI単位では“Hz”を利用します。下記の図では、波が3回往復しているので“3Hz”となります。
周波数は高ければ高いほど直線性が高くなり、エネルギーも大きくなります。その分反射や減衰が大きくなる性質があります。
位相について
波形で重要なパラメーターは位相 (Phase)です。位相とは波の位置のズレを表し、同じ周波数と振幅を持つ波形でも画像のように、水色の点線は90°、オレンジ色の破線は180°位相がずれています。
実際の電波は複数の位相の波を合成して任意の波形を作成し、出力しています。(詳細はここでは割愛)
スペクトラムアナライザによる電波の測定
電波のパラメーターについて説明してきました。これまでは横軸を時間のパラメーターとして測定していました。これを時間ドメインと言います。
ここからは横軸を周波数Hzとして測定を行います。これを周波数ドメインといいます。実際の電波を測定する際はスペクトラムアナライザを用いて電波の評価を行います。
画像引用:https://www.keysight.com/ja/pcx-x205200/x-series-signal-analyzers?nid=-32508.0&cc=JP&lc=jpn
※スペクトラムアナライザは米キーサイト(旧アジレント・テクノロジー)、米テクトロニクス、日本だとアンリツ等が主力メーカーです。電波を測定するのには、周波数とパワーを定量的に測定できるスペクトラムアナライザは必須です。
スペクトラム・アナライザの画面では横軸が周波数 Hz、縦軸が振幅となります。図では100 MHz -30 dBmの信号をSG (Signal Generator)より出力してスペクトラムアナライザに入力しています。山の頂点(ピーク)にくるのが搬送周波数です。このように、スペクトラムで電波の周波数やパワー、変調などのパラメーターがわかるのがスペクトラムアナライザーです。
※スペクトラムアナライザでの振幅の単位は1mWを基準とした“dBm”が使われます。 換算式は、XをmWとしたとき、dBm=10log10 X[mW]です。0dBmが1mWとなります。
※本エントリーで使用するSGとスペアナの出力/入力インピーダンスは50Ωとし、インピーダンスマッチが行われているものとします。
アナログ変調
電波の波形には変調(Modulation)を行い、振幅や周波数のパラメーターを変更して波形を様々な形に変更できます。
変調にはアナログ変調とデジタル変調がありますが、本エントリーではアナログ変調のAM変調とFM変調について説明します。
AM (Amplitude Modulation)変調
AM変調とは、周波数はそのままに波形の振幅を任意の量に増減する変調です。スペクトラムアナライザーでAM変調の波形を確認すると、ピークの位置が連続的に変化する様子がわかります。この変調方式によって情報成分を振幅としてそのまま出力し、AMラジオで使われています。
FM (Frequency Modulation)変調
FM変調とは、振幅はそのままに周波数のバラメーターを変更するものです。100 MHz -30dBmのFM変調の波形をスペクトラム・アナライザで確認すると図のように表示されます。図では、搬送波100 MHzを中心に周波数が70-130 MHz間で移動させています。この原理を利用したのがFMラジオになります。
あとがき
以上が電波の基礎知識になります。この記事で覚えてほしいのは、電波は波でありそのパラメーターには周波数と振幅があること、そして変調によって波形を変更できるという点です。
さて、次の記事では、今話題のIoTの話について移りたいと思います。